「但馬弁ってかわいいな」と聞いて、この記事を開いてくれた方も多いのではないでしょうか。でも実は、但馬弁の「かわいい」は、標準語の「かわいい」とは全然違う意味を持っています。
知らずに使ってしまうと、大変な誤解を生んでしまうことも。
この記事では、そんな但馬弁の言葉の意味や使い方を、例文を交えながら丁寧に紹介します。
この記事でわかること
- 但馬弁の「かわいい」が持つ本当の意味
- 但馬弁で使える優しくてかわいい言葉の一覧
- 但馬弁ならではの語尾・助詞の特徴(~だしけ・~なぁあ)
- 標準語との違い(アクセントの話)と例文での使い方
- 但馬弁が使われる地域とその背景
- 但馬弁が「心地よい」と言われる理由
但馬弁でかわいいは本当の意味?
結論から言うと、但馬弁の「かわいい」は「可哀想(かわいそう)」という意味です。
標準語の「かわいい(愛らしい)」とは、まったく別物。これを知らずにいると、思わぬ場面で誤解してしまうかもしれません。
但馬弁のかわいい=可哀想(悲しい)
標準語では「あの子、かわいいね」と言えば、容姿や言動を褒める言葉ですよね。
でも但馬弁でこの言葉を使うと、「あの子、かわいそうだね」という意味になってしまいます。
たとえば但馬の方が「そのこと、かわいいなぁあ」と言ったとき。
標準語話者は褒められたと感じるかもしれませんが、実際には「それは大変だったね、気の毒に」という共感の言葉なのです。
こうした意味のズレは、但馬弁の歴史的な語彙の残り方によるもので、但馬学研究会の資料にも「かわいい=可哀想」として記録されています。
告白に使うと逆の意味になる理由
たとえばこんな場面を想像してみてください。
好きな人に「君のこと、かわいいと思ってる」と但馬弁で話しかけたとします。
でも相手が但馬出身なら、「え、なんで私のことかわいそうだと思うの…?」と首をかしげるかもしれません。
好意を伝えたつもりが、まったく別の受け取り方をされてしまう。
これが「告白で逆の意味になる」理由です。
「好きだよ」を但馬弁でそのまま表現するなら、「好きだしけー(好きだから)」と言うのが自然。
「かわいい」で伝えようとすると、意図とは真逆のメッセージになってしまうので注意が必要です。
「わたし可愛いから働かなくていいの」は、但馬弁で「ワエ・ワヤク・チャベッピ・ンダシ・ケェハ・タラカン・デイ・イッチャ」だっちゃ。
片手にこうの卵持って唱えんしゃー。 https://t.co/npfAIjVp42— とらうとさぁもん (@Harpuia_tomo) September 9, 2019
この投稿はネタ的な但馬弁訳ですが、「かわいい」という言葉をそのまま使うと、標準語とは違うニュアンスになりやすいことをイメージする参考になります。
過去の投稿ですが、但馬弁の「かわいい」の意味を理解する参考として紹介しています。
但馬弁で実際に使える優しい言葉一覧
「かわいい」が使えないなら、どんな言葉で褒めればいいのか気になりますよね。
実は但馬弁には、やわらかくて温かみのある表現がたくさんあります。
ここではその中から、特に覚えておきたい言葉を紹介します。
あじこい=美しい
「あじこい(あじけー)」は、人の容姿や服装、景色などが「美しい・きれい」なときに使う言葉です。
「あじけーもん着とんさるがあ」 (きれいな服を着ていらっしゃるね)
引用元:但馬方言辞典
「あじ濃い=味が濃い=際立っている」という語源から来ているとも言われています。
特に養父郡周辺でよく使われてきた語彙で、但馬方言辞典にも詳しい記載があります。
誰かを褒めたいときに「あじこいなぁあ(きれいだよね)」と使うと、地元らしさが伝わるひと言になりますよ。
あかい=明るい
「あかい」というと、標準語では「赤い(色)」のイメージが強いですよね。
でも但馬弁(および西日本各地の古語的な方言)では、「明るい」という意味で使います。
「外があかいうちにかいもんにいっといたほうがえーで」 (外が明るいうちに買い物に行っておいたほうがいいよ)
夕暮れ前に急いでおうちに帰るよう声をかけるような、日常的な場面で自然に使われる表現。
古語の「あかし」が方言として残った例のひとつで、歴史を感じさせる言葉でもあります。
かわいく聞こえる語尾と助詞(~だしけ・~なぁあ)
但馬弁の「かわいさ」の多くは、実は語尾や助詞のやわらかさから来ています。
代表的なものをまとめると以下のとおりです。
| 但馬弁の語尾・助詞 | 標準語での意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| ~だしけ(だしけー) | ~だから | 好きだしけー(好きだから) |
| ~なぁあ | ~だよね(同意・共感) | そうだなぁあ(そうだよね) |
| ~ちゃ(だっちゃ) | ~だよ | 行くっちゃ(行くよ) |
| ~にゃー | ~しなさい | 早よしにゃー(早くしなさい) |
| ~だらー | ~だろう | そうだらー(そうだろう) |
出典元:豊岡市立図書館の日但辞書
現時点で確認できる情報を整理すると上の表のようになります。
「だしけー」や「なぁあ」は、但馬弁の中でも特に特徴的とされる語尾。
語尾を伸ばす柔らかなリズムが、話し言葉に独特の温もりを生み出しています。
豊岡市立図書館の日但辞書でも、これらの語尾は丁寧に記録されています。
但馬弁の意味や使い方は?
但馬弁の言葉を覚えても、使い方が分からないと実際の会話ではなかなか使いにくいですよね。
ここでは標準語との違いと、具体的な例文で確認していきましょう。
標準語との違い・地域によって異なるアクセント
兵庫県の方言というと、関西弁のようなアクセントをイメージする方も多いかもしれません。
しかし、但馬弁は地域によってアクセントに違いがあり、いわゆる関西弁と同じとは限りません。
たとえば北但馬・南但馬・それ以南では、単語のどこを高く読むかが異なるとされ、それぞれ東京式・中間型・京阪式のように分類が分かれると紹介されています。
そのため、但馬弁は「兵庫県の方言なのに、思っていた関西弁と少し違う」と感じられることがあります。
また、方言区画上では、中国方言の東山陰方言に分類されるとされています。
この「どこか聞き慣れた感じがするのに少し違う」響きが、他地域の人にとって聞き心地よく感じられる理由のひとつかもしれません。
例文で使い方を確認
実際の会話シーンをイメージしながら、例文を確認してみましょう。
| 但馬弁 | 標準語訳 |
|---|---|
| あじけーなぁあ | きれいだよね |
| 外があかいうちに帰ろーや | 外が明るいうちに帰ろうよ |
| そんなんかわいいなぁあ | それはかわいそうだよね |
| 好きだしけー、ずっと一緒にいたいっちゃ | 好きだから、ずっと一緒にいたいんだよ |
| えらいんじゃないー? | 体調悪くない?(しんどくない?) |
| よーさりになったなー | 夜になったね |
「えらい」も要注意の言葉で、但馬弁では「だるい・しんどい」という意味で使います。
標準語の「すごい・立派な」とは全く別の意味なので、覚えておくと安心です。
但馬弁を使う地域はどこ?
但馬弁という名前は知っていても、「どこで話されているのか」はあまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。
ここで地理的な背景も合わせて確認しておきましょう。
兵庫県北部の但馬地方
但馬弁が話されるのは、兵庫県北部の「但馬地方」です。
具体的には以下の市町が含まれます。
| 市町 | 特徴 |
|---|---|
| 豊岡市 | コウノトリで有名な地域。但馬地方の中心都市 |
| 養父市 | 農山村ならではの自然が豊かな地域 |
| 朝来市 | 竹田城跡で知られる歴史ある地域 |
| 香美町 | 日本海に面した漁業の町 |
| 新温泉町 | 湯村温泉が有名な温泉地 |
現時点で分かっている情報を整理すると、上の表のようになります。
日本海に面した北側から、内陸の南側まで広い範囲にわたる地域で、それぞれに微妙な言葉の違いもあります。
たじまUIターン情報サイトによると、但馬地方全体で3市2町から構成されているとのこと。
中国方言の影響と関西弁との違い
「兵庫県の方言なのに、なぜ関西弁っぽくないの?」と感じる方もいるかもしれません。
その理由のひとつは、但馬弁が方言区画上では中国方言の東山陰方言に分類されるとされているためです。
兵庫県内の方言ではありますが、大阪や京都でイメージされるような関西弁とは、語尾やアクセントに違いがあります。
たとえば、関西弁では「そうや」「行くで」のような言い方がよく聞かれますが、但馬弁では「そうだらー」「行くっちゃ」のような表現が見られます。
また、但馬地方の中でも地域差があり、北但馬・南但馬などでアクセントや言い回しが変わることもあります。
そのため、但馬弁は「関西弁ではない」と言い切るよりも、関西弁とは違う特徴を持つ、兵庫県北部ならではの方言と考えると分かりやすいです。
但馬弁が心地良いと言われる理由
「なんか但馬弁って、聞いていて落ち着くよね」という声を耳にしたことはありませんか?
その「心地よさ」には、言葉の響きや地域性がしっかり関係しています。
やわらかい響きが魅力
但馬弁の特徴のひとつが、連母音の融合によるなめらかな音です。
「あじこい→あじけー」「寒い→さみー」のように、語末が自然に伸びるような発音になることが多く、全体的にやわらかい印象を与えます。
また「なぁあ」「だらー」「にゃー」など、語尾をのばす傾向があるのも特徴。
ゆったりしたリズムの中に話が流れるため、聞いていてどこか懐かしく、落ち着く感覚があると言われています。
「方言番付 聞いて心地の良い響き」というタイトルで取り上げられたこともあるほど、その音のやわらかさは多くの人に認められています。
地元らしさが伝わる言葉
「あじこいなぁあ」「よーさりになったなー」——こういった言葉には、日常の情景がにじみ出ています。
観光地として知られる城崎温泉やコウノトリの里・豊岡の雰囲気とも相まって、言葉そのものが地域の風土を伝えてくれるようです。
「えらい(しんどい)」「いぬる(帰る)」「たらし(おやつ)」など、一見意味が想像しにくい言葉も、覚えてみると会話の中でなんとも味わい深く感じられます。
但馬出身の人と話すとき、こういった言葉をひとつ知っているだけで、距離がぐっと縮まる気がします。
まとめ
但馬弁は、知れば知るほど深みのある方言です。
「かわいい」ひとつとっても、意味をちゃんと理解してから使うことが大切。
- 但馬弁の「かわいい」は「可哀想(かわいそう)」という意味で、標準語とは意味が大きく異なる
- 「美しい・きれい」を伝えたいときは「あじこい(あじけー)」を使う
- 「明るい」は「あかい」、「~だから」は「~だしけ」
- 語尾の「なぁあ」「ちゃ」「だらー」がやわらかな響きを生む
- 但馬弁は関西弁と異なる特徴もあり、方言区画上は中国方言の東山陰方言に分類される
- 豊岡市・養父市・朝来市など兵庫県北部の3市2町で話されている
もし但馬を訪れる機会があれば、地元の方に「あじけーとこだなぁあ」(きれいなところだよね)とひとこと話しかけてみてはいかがでしょうか。
きっと笑顔で返してもらえるはずですよ。


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